スカーレット・ヨハンソン主演映画『私がクマにキレた理由(わけ)』【監督:シャリ・スプリンガー・バーマン&ロバート・プルチーニ|原作:エマ・マクローリン&ニコラ・クラウス|原題:The Nanny Diaries】(2007年)の評価をご紹介します。
また、あらすじネタバレやラスト結末、登場人物をまとめました。
私がクマにキレた理由の評価【映画】
『私がクマにキレた理由』は、アメリカのエマ・マクローリン/Emma McLaughlinのベストセラー小説「ティファニーで子育てを」(The Nanny Diaries)を、もとに作られた映画です。原作が小説だけあって、シッカリとしたストーリー構成を感じます。
また、上流家庭の生活や子育ての、的確な描写には感心させらせました。普段、あまりお目にかかることのない世界なだけに、唖然とさせられる部分も多いはずです。そのため、裕福だから幸せとは限らないと知る、良い機会を与えてくれる作品だとも言えます。
豪華なキャスト
映画『私がクマにキレた理由』は、何と言っても、出演者の豪華さに目を惹かれました。
主役のアニーを演じるスカーレット・ヨハンソンといえば、マーベル映画『アベンジャーズ』のナターシャ・ロマノフ/ブラック・ウィドウで有名です。そにためか、アクション系の強い女性のメージが最近は強くなっています。
しかし、この映画では、彼女の全く違う一面を見ることが出来ました。自己主張が苦手な主人公を、時にはコミカルさも交え熱演しています。
そして、存在感抜群のミセスX役のローラ・リニーは、実威派女優として有名です。彼女は日本では、あまり馴染みがないかもしれません。しかし、アカデミー主演女優賞やその他多くの賞にノミネートされた経験があります。
今回の役柄では、裕福ながらも満たされない女性を見事に演じていました。また、最後に母親の心を取り戻す姿には感動さえ覚えます。主人公も顔負けの、彼女の演技力は必見です。
それ以外の出演者は、後に『アベンジャーズ』で、スカーレットと共演することとなるクリス・エヴァンス。そして、音楽ファンにはたまらない、グラミー賞歌手アリシア・キーズが、脇を固め熱演しています。
劇中音楽の選曲が素晴らしい
映画『私がクマにキレた理由』は豪華なキャストに負けないくらい、使われているバックミュージックの選曲の良さも抜群です。
主人公アニーが面接失敗後、ニューヨークの街を歩くシーンで流れる、オデッセイ/Odysseyの「Native New Yorker」。70年台を代表するヒット曲で、ニューヨークのオシャレさを感じることができます。
また、別荘に自家用機で訪れる際に流れる、ブロンディー/Blondieの「The Tide Is High」。少しレゲエチックな曲調が、バカンスにピッタリでした。
そして、何と言っても、ジョージ・マイケル/George Michaelの「Freedom! ’90 」。アニーがニューヨークに引っ越しする際と、エンディングの2回も使われています。
個人的にも大好きな曲なので、テンションが上りました。あまりの嬉しさに、映画が終わった後に、PVを何度も観たほどです。
それ以外にも、各年代を代表するヒット曲が数多く使われており、映画を盛り上げてくれます。これほど沢山の懐かしい曲が、使われているとは知らなかったので、大いに楽しむことが出来ました。
私がクマにキレた理由のあらすじネタバレやラスト結末【映画】
主人公アニーは面接官からの、「アニー・ブラドックとは、どういう人間なの?」という、簡単な質問に答えることが出来ませんでした。つまり、「自分って なんだろう?」と、疑問に感じてしまったのです。
そして、偶然、公園に赴いた彼女がグレイヤーを助け、人生の歯車が動き始めます。彼の母親に名前を聞かれ、彼女は「アニー」と答えます。しかし、母親は「ナニー」と聞き間違えてしまうのです。ナニーとは子守という意味です。
そして彼女は子守としてスカウトされてしまいます。つまり、大きな勘違いから、この物語は幕を開けました。
グレイヤーの子守となって働く彼女に、いくつもの試練が訪れます。上家庭ならではの仕きりだけでなく、子守以外の雑用までされられるのです。当然、嫌気が差しますが、彼女は辞めようとしません。
それは、子守の鉄則を、彼女は破ってしまったからです。その内容は、決して「愛している」と、子供に言わないことでした。なぜなら、辞める時の辛さが、1000倍にもなります。すでに、その掟を破っていた彼女は、グレイヤーに深い愛情を抱くようになっていました。
ある日、アニーは雇い主家族と一緒に別荘へ赴きます。そこで偶然、ミセスXが彼女の部屋に隠しカメラを仕掛け、監視をしていると知りました。
そして、ある日、ミセスXが彼からの電話を隠していたことをキッカケに、アニーは怒りを爆発させます。つまり、同じマンションに住む青年との交際が、バレていたのです。彼女は解雇となり、荷物を纏めるために一人ニューヨークへ戻ります。
部屋に戻った彼女は、そこでテディベアに仕込まれたカメラを見つけました。そして、今まで抱いていた不満や感情を、全てカメラに向かってぶつけるのです。
その後、その録画内容は、上流家庭の妻たちの親睦会で流されます。最初は衝撃的な内容に、彼女たちは動揺を隠せませんでした。しかし、次第にアニーの言葉に感動し、涙を流す者まで現れたのです。
数ヶ月経ったある日、アニーはミセスXから手紙を受け取ります。その内容は、彼女の予想に反し、感謝の言葉でいっぱいでした。そして、何かが吹っ切れたように彼女は人生の駒を前へ進め始めます。
構成に関しては、人物を標本のように表現した場面に、斬新さを感じました。つまり、歴史博物館の展示や、図鑑を見ているような描き方です。全部ではありませんが、特徴的な登場人物を人種として扱っています。
そのため、彼らを本名ではなく、ミセスX といった種族的な名前で呼んでいたのです。なかなか、面白い表現方法ですね。
また、赤い傘を使った演出にも、目を惹かれます。まるで映画『メリー・ポピンズ』のようで、懐かしく思いました。きっと、子守の話だということや、傘が幸せを運ぶと伝えたかったのでしょう。
しかし、『メリー・ポピンズ』を知らない人には、全く伝わらないと思います。なかなか効果的な演出だっただけに、残念でなりません。とはいえ、映画『私がクマにキレた理由』は、ストーリーや演出、構成、音楽、出演者と、どれをとっても二重丸の作品です。
私がクマにキレた理由の登場人物【映画】
映画に出演する主な3人をご紹介します。
アニー・ブラドック/Annie Braddock – 主人公の子守 – スカーレット・ヨハンソン/Scarlett Johansson
人類学を学んでいたアニーが、金融業界に就職しようとする無理をまず感じました。親の希望で仕方はないとは言え、人生に対する不器用さを感じます。また、偶然見つけた子守の仕事も、ミセスXに振り回され嫌になってきます。
なぜ、アニーはすぐに辞めなかったのでしょうか?
その一番の理由は、グレイヤーに対する愛情ではないかと思います。母親の愛情に飢えた彼を、心配する気持ちが大きかったのです。また、ミセスXを哀れむ気持ちもあったのだと思います。
裕福でも心が満たされず、見栄を張り続ける彼女に対しても、放っておくことが出来なかったのでしょう。それは、アニーがグレイヤーの目の前では、絶対にミセスXに口答えをしなかったことから感じました。
子供も彼女も両方同時に傷つけるようなことは、絶対にしないのです。これは、彼女なりの理解や思いやり、そして優しさだと思います。とはいえ、アニーが仕事を続けた理由は、他にもあったと最後に解ります。
彼女は人間観察をしていたのです。子守をしながら出会った、さまざまな人々についてをレポートにまとめます。そして大学院へ入るため、奨学金選考に提出しました。
こうなると、最初に感じた不器用さは、何だったのでしょう?
アニーが子守の経験で成長し、世渡り上手になったのかもしれません。つまり、自分自身とは何なのかを、やっと見つけることが出来たのです。そこに至った一番のキッカケは、テディベアに向かって、自分の感情をぶつけたからだと思います。
彼女は不満だけでなく、家族の大切さも語っていました。つまり、怒りを発散したことで、自身の本心や感情を知ることが出来たのだと感じました。
ミセスX/Mrs. X – アニーの雇い主 – ローラ・リニー/Laura Linney
最初はアニーに対しても優しく、人当たりがよく上品な女性だと思いました。しかし、自身が雇い主になると、彼女は一転します。立場の違いとも言えますが、彼女を召使いのように扱うようになるのです。
人前での振る舞いと家の中でと、ミセスXの態度があまりにも違います。これには、唖然としました。これが、上流家庭の奥様なんでしょうね。表裏?建前と本音?色んな言葉が浮かんできました。
夫は不倫をし、家庭や子供には無感心です。そのため、夫婦仲は決して良いものではなく、目を合わせば喧嘩ばかりです。つまり、夫婦関係としては、完全に破綻しています。その不満の捌け口が見栄や浪費、そして、アニーへの意地悪なのです。
お金で何でも出来ても、気持ちは満たされません。これは裕福さ故の不幸だと思います。お金の魔力とは、怖いものですね。人を縛り付け、身動きとれなくしてしまいます。裕福さに憧れはありますが、こうは成りたくないものです。
しかし、アニーの不満と家族への想いが詰まった映像を観て、ミセスXは変わります。夫と別れ、息子と二人で人生を新しく歩み始めます。この時の彼女は、取り憑かれていたものから開放されたように見えました。
今までとは、まるで別人です。愛情あふれる、優しい母親になっていました。何がキッカケになるかは分かりませんが、人間は変れるものだと実感しました。
グレイヤー/Grayer – アニーが子守をする少年 – ニコラス・アート/Nicholas Art
ミセスXだけでなく彼も、裕福さの犠牲者です。グレイヤーが本当に求めているのは心です。どれだけ、玩具や豪華な誕生日をしてもらっても、嬉しくありません。お金で愛情は買えないのです。
そのため、我儘さが最初は目立っていました。このままの状態で、大人に育っていれば、嫌な奴になっていたでしょうね。しかし、アニーと心を通わせたことで、グレイヤーは変わってゆきます。
普段は禁止されていることを、こっそり内緒でさせてくれたのです。最初は戸惑う彼も、だんだんと子供らしさを取り戻し、楽しむようになります。
また、彼が道化師を怖がった際、母親ではなくアニーの元へ駆け寄ります。これには、ある意味納得です。単に、彼女に懐いたからではありません。自分のことを理解し、大切にしてくれるのは誰なのか?分かっているからだと思います。
母親にとっては残酷ですが、グレイヤーの素直な気持ちの現われです。とはいえ、彼女が解雇された時は、どうなるかと心配しました。涙を流しながら、彼女の後を追う彼の姿が、今も目に焼き付いています。
しばらくの間、彼はアニーを恨むかもしれません。しかし、彼女のおかげで、母親の愛情を取り戻すことが出来ました。子守ではなく、本当の母親の愛が一番です。
もし将来、アニーと出会うことがあれば、きっとグレイヤーも感謝し喜ぶでしょうね。その時の二人の姿を、ぜひ見てみたいと思いました。
まとめ
映画『私がクマにキレた理由』の評価を紹介しました。
そして、記事の後半では、あらすじネタバレやラスト結末、登場人物がまとめてあります。
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